大山さん死去声優に葛藤や苦悩も：人生の舞台裏に迫る

人気アニメ「ドラえもん」の声優として知られる大山のぶ代（おおやま・のぶよ）さんが、2023年9月29日午後4時23分に老衰のため90歳で亡くなりました。大山さんは1979年から2005年までの26年間にわたり、ドラえもんの声を担当し、多くの子供たちに愛されてきました。彼女の声とキャラクターは、アニメだけでなく、日本文化の一部となっています。しかし、その背後には数々の葛藤や苦悩が存在していました。

大山のぶ代さんの声優としてのキャリア

大山さんは東京都に生まれ、少女時代にはその独特な声に劣等感を抱いていたといいます。しかし、母親のアドバイスに従い、中学で放送部に入り、演劇にも目覚めました。その後、俳優座養成所に進み、1960年にはNHKの人形劇「ブーフーウー」でデビューを果たします。声優としてキャリアを重ね、様々な役を演じながら、1978年にはドラえもんの声を担当することになります。

当初は俳優としての大成を目指していた大山さんでしたが、「ドラえもん」というキャラクターが彼女のブランドを完全に確立させることになり、その結果として多くの葛藤を抱えるようになりました。例えば、古くからの知人によると「声優としての成功が、女優としての夢を圧迫する形になった」という意見もあります。自伝の中で彼女は「声優としての仕事に懐疑心を持つこともあった」と振り返っています。

声優界の現実

大山さんは「丁寧に楽しく作りたかった」と、自伝の中で語っています。第1次アニメブームの際、粗製乱造の作品が増えていたことに不安を感じており、自身の役割とその質を重視していました。スタジオでの仕事では、信頼できる仲間とのチームワークが非常に重要であると認識しており、制作過程でのストイックな姿勢が垣間見えます。

大山さんが個々のキャラクターに込めた愛情は、アニメの枠を超えて、多くの人々に感動を与えました。彼女が声優としてのキャリアを通じて築いた信頼は、今でも多くの人々に影響を与えています。

大山のぶ代さんの印象的な事績

年代	主な活動
1933年	東京都に生まれる
1960年	NHK人形劇「ブーフーウー」に出演
1978年	「ドラえもん」の声優を担当
2005年	「ドラえもん」シリーズから引退
2017年	夫、砂川啓介さんの逝去

個人的な悲劇とその影響

大山さんの人生には、多くの苦悩も伴っていました。彼女と夫の砂川啓介さんは、「おしどり夫婦」として知られていましたが、子供を持つことができなかったことは、夫婦にとって非常に辛いことでした。特に、妊娠初期に経験した流産や、先天性疾患を持つ子供の早世など、人生の悲劇が二人を襲いました。

砂川さんの著書の中では、「残念です、あと30分早かったらなんとかなっていたんですが」といった医師の言葉が、二人の心に深く刻まれています。このような悲劇が、大山さんの心に負担を与え、彼女が声優として成功する一方でどのように苦しんできたかを物語っています。

料理研究家としての顔と、その影響

大山さんは料理研究家としても活動し、その繊細な性格が料理にも表れました。長い間家族の伝統を受け継ぎ、料理番組「夕食ばんざい」などで腕を振るい、出版した料理本「大山のぶ代のおもしろ酒肴」は136万部以上のベストセラーを記録しました。このような活動は、声優としての一面だけでなく、家庭の温かさや日本文化の大切さを示すものでした。